カトレア製作

カトレアの製作について

カトレアの製作について

2026年2月22日

カトレアの制作過程を思い出しながら書いています。

まばらに置いてある小さなピース

私の今のスタイルは、「楽曲ごとにゼロから作っていく」というものではありません。ふと浮かんだアイデアやメロディの断片を、その都度ボイスメモに残していきます。(今確認してみると、いちばん古いものは2015年でした。)

まばらに置いてある小さなピースに、ある日ふと別の断片が連なっていく。その連なりが急に加速していくタイミングが訪れると、一気に楽曲が形になっていきます。納期に追われたり予算を中心とした世界で楽曲を作っていない、というところを、自分では勝手に一つの個性だと思っています。

この『カトレア』のメモを遡ってみると、2025年6月にメインの部分のメロディが生まれていました。そこには半分ほどの歌詞が乗っていました。全体の形が定まってきたのが、同じ年の11月上旬です。あまり迷わず、まっすぐに完成へ向かっていった印象があります。

歌詞についても確認してみると、「カトレア」という言葉自体は、2018年10月の段階でメモに出てきていました。その言葉と、この楽曲の世界が重なっていき、2025年8月には歌詞が99%まで出来上がっています。最後の1ピースがはまって、完全な形になったのが11月7日。
過去の履歴をあらためて確認してみると、なかなか興味深いものでした。

一輪挿しの花を中心に

制作において軸になったのは、妻の両親の家に行ったときに見た、一輪挿しの花です。そのときのイメージを中心にして、歌詞もメロディも、楽曲の展開も、すべてが紐づいています。
私は特別花に詳しいわけではありませんが、それでもふと「これは覚えているなぁ」と感じる花や、そのときのシチュエーションが、人生の中で何度かあります。

なぜそう感じて、なぜその光景が記憶に残るのか。少し距離を置いて考えてみると、「そのときの自分自身の状態」が大きく作用しているのだと思います。

誰にも理解されないような孤独のイメージの中にいたり、二度と同じ形では訪れない再現性の無い出会い、予期せぬ別れがあったり。そういった出来事によって、人は自分でも気付かないうちに、これまでとは違う座標に辿り着いていることがあります。そして、その新しい座標に立ったときにしか生まれない感覚や、そこからしか見えない情景があって、それがこの楽曲を完成させてくれたのだと思っています。

一番ふさわしい場所

歌詞の中からピックアップするなら、「大切な哀しい出来事」「大切な哀しいぬくもり」という言葉が気に入っています。

私は昔から「別れ」というものが特に苦手で、何とか攻略できないものかと長いこと悩んでいました。けれど、大切なものというのは、自分の意志だけでコントロールして作り上げられるものではありません。大切にすればするほど、別れの衝撃は大きくなっていきます。それはとても辛くて悲しいことなのに、なぜかその痛みは、ずっと大切な形のままで心にこびりつき続けます。

悲しくなくなるわけでもなく、記憶がきれいさっぱり消えてしまうわけでもない。それでも、ずっと「大切な悲しみ」のままでいてくれるものが、心の中のいちばんふさわしい場所に、いつかそっと飾られるようになる。
今はそんなふうに感じています。

中野圭造

Keizo Nakano

Songwriter / Guitar

小学4年生の時にビートルズを聴いて感動し、中学生でバックトゥザフューチャーを見てギターをはじめ、高校生でバンドを始めて、サラリーマンをし、起業し、また曲を書き始めました。←今ここ

カトレアCattleya

カトレア[Archetype]

一輪挿しの薄紫の花を見つめる場面から始まるこの曲は、「日常に潜んでいる愛」と「消えない記憶」をそっと見つめるような楽曲です。

Archetype(アーキタイプ)には、かつてYMO・高橋幸宏プロデュースでメジャーデビューしたシンガー、守屋里衣奈さんをボーカルに迎えています。アナログビンテージサウンドの上で、里衣奈さんの透明感と芯のあるボーカルが、“カトレア”という名前のついた愛の物語を丁寧に描き出してくれました。

Published On: 2026年2月22日Categories: ColumnTags: