Lost My Heart Nari

“It feels more poetic.”|『Lost My Heart』が生まれるまで

“It feels more poetic.”|『Lost My Heart』が生まれるまで

2026年8月7日

Behind the Song – Lost My Heart Recording Note

レコーディングは、「歌を録る」というよりも、一緒に作品を作り上げていくような時間だった。
彼女にとっても本格的なボーカルレコーディングは初めてだった。レコーディングの前には歌詞の意味や楽曲が描く世界観について話し合い、言葉のニュアンスや感情の向かう先を二人で共有しながら、一つひとつのフレーズを積み重ねていった。
Nariは英語の表現についても積極的に意見をくれた。時には歌詞やタイトルについてアイデアを交わしながら、楽曲は少しずつ「僕の曲」から「二人の作品」へと変わっていった。

ボーカルディレクションで大切にしたのは、完璧に歌うことではなく、感情をそのまま声に乗せることだった。
実はいくつかタイトルの候補があった。楽曲のテーマを直接示すタイトルも考えていた。
でもNariは『Lost My Heart』について、
“It feels more poetic. It’s pretty.”
と話してくれた。

その言葉を聞いたとき、このタイトルが彼女の中で自然に響いた理由が少しわかった気がした。
意味をすべて説明するのではなく、聴く人それぞれの中で広がっていく余白。その美しさが、この曲には必要だったのかもしれない。
だから僕たちは、『Lost My Heart』というタイトルを選んだ。

振り返ってみると、このレコーディングで一番印象に残っているのは、技術的なことではなく、お互いが作品に対して同じ方向を見ていたことだ。
だからこそ、『Lost My Heart』は完成したというより、二人の感性が重なり合う中で自然に生まれた一曲になったのだと思う。

Lost My Heart Nari
Lost My Heart words

使用機材

Vocal
NEUMANN M149 Tube
WARM AUDIO WA-44

Electric Guitar
Fender Jaguar
Fender Deluxe Reverb
+BIG MUFF(Definitely)

RODE NTK(mod)
SHURE SM57
WARM AUDIO WA-44
WARM AUDIO WA-2A

Acoustic Guitar
Martin D-28 1976
RODE NTK(mod)
SHURE SM57

WARM AUDIO WA-44
WARM AUDIO WA-2A

The Lonleys

The Lonleys

Songwriter

アレンジャー・レコーディングエンジニア。
LONELY RECORDS CEO。ジャンルや国境を越え、世界中のアーティストとのコラボレーションを信条に活動する音楽家。

Lost My Heart

Lost My Heart (feat. Nari) [Archetype]

轟音のギターと深い残響が織りなす音の波。その中を駆け抜けるように、シンプルなメロディが楽曲を導いていく。
シューゲイズの幻想的な空気感をまといながらも、この曲の根底にあるのは60年代ロックやブリットポップから受け継がれた普遍的なソングライティングだ。さらに、オルタナティブロックやグランジの衝動を取り込み、轟音の中を一気に駆け抜けるような疾走感を生み出している。楽曲全体には、夢と現実の境界を漂うような感覚が流れている。深いリバーブに彩られたギターの響きと神秘的なシンセサウンドは、目の前の世界が少しずつ輪郭を失い、光の中へ溶けていくような情景を描き出す。

Nariの歌声は、少女と大人、その狭間を静かに行き来する。どこか気怠く、儚く、それでいて心の奥には小さな反抗心を宿している。そのアンビバレントな魅力が、楽曲に現実と幻想の狭間を漂うような空気を与えている。
“I am you, and you are me.”
分離していたものがひとつになり、やがて消えていく。その先に待っているのは喪失なのか、それとも解放なのか。『Lost My Heart』は、喪失というありふれた言葉の奥に、自我と現実、その境界線が静かに溶けていく瞬間を描いた作品である。その答えは語られない。ただ、轟音の向こう側で、聴き手それぞれが自分自身の「Lost My Heart」を見つけることになるだろう。

Published On: 2026年8月7日Categories: レコーディングノートTags: